メガネ君、プリメインアンプを入れ替える
2020年 10月 21日
私は長年、Aura Designのアンプを使ってきたんですよね。
物量投入などしなくても、まともな設計のアンプであれば音は変わらないという、いい見本だと思ってきましたし、無駄のないデザインとコンパクトさも気に入っていました。
しかし、このたびアキュフェーズのアンプと入れ替えました。
決して安い買い物でもないですし、もちろん、衝動買いではありません。
● 長年使い続けられるアンプを求めて
アンプを買い替えようと思ったきっかけは、もうずいぶん前ですが、村上春樹氏の『私はオーディオマニアではないが、聴く音が変わっては困るので』というような文書を読んでから。
村上氏は、オーディオをまめに入れ替えるようなことはしないという文脈で言ったのだと思いますが、私はその文書をどこか心にとどめていて、それって自分的にはどういうことなんだろうと瞑想していた気がします。良い視点だと思ったんですよね。
アンプって電器ですから、使っていくうちに当初性能からの劣化は免れません。自分なりの結論として、そこを買い替えではなくて、オーバーホールで性能を回復できるような体制の整った製品が欲しくなったわけです。以前、機械式時計に興味を持ったことがあり、その頃から、長年、愛着を持って使いたいものは、メンテナンスの体制がきちんとしている必要があると思ってます。
●ハイクラスのアンプ性能で重視されるべき点に「長寿命」があっていいのでは
メンテナンスの体制と同じぐらい重要なこととして、そもそも劣化しにくいということも重要ではないかと感じています。
初期性能の音はどれもそれほど変わらないとして、設計上、それが長年保たれるであろうものを選びたいと。毎日のように音楽を聴いていると、少しずつ劣化していく機器の変化には気づけないと思うんですよね。ゆで蛙の話じゃないですけど。たとえば、左右の音量バランスにずれが生じてそれがちょっとずつ拡大したとして、私は気づけないと思います。
アンプのパーツで、劣化の影響が特に気になっていたのは、ボリューム、リレーでした。あとは、トロイダルトランスを使っているものについてはトランスの唸りが出る可能性も。
実際、古いアンプのオークションの商品解説を読むと、必ずボリュームの「ガリ」の有無について書かれています。
リレーについては接点を切り替えているパーツで、いかにも問題が発生しそうなのにオーナーが手入れをする方法もないので、劣化するに任せるしかないところ。昔、修理でリレー交換をしたことがあり、取り外したものをもらってきたのですが、見た目より軽くて華奢に感じました。このパーツが音質に大きな影響を与えていると思うと、一抹の不安を覚えました。
トロイダルトランスは、唸るものはコストがかかっていないと何かで読みましたが、本当のところは私にはよくわかりません。電源の環境によっても、唸りが出たりでなかったりするものでしょうか。以前使っていた別のAura Designのアンプは、トランスの唸りがブザーのような騒音になって、残念ながら買い換えました。とても気に入っていたのですが、国内代理店でも修理できませんでした。
アンプは劣化する場所が決まっていて、対策をすれば長寿命化が図れそうなものなのに。
ずいぶん昔から進歩しないものだなぁと思っていましたが、最近、このあたりは進歩があったようですね。
● ピュアオーディオの技術も進歩している
日進月歩のITの世界と違って、特にピュアオーディオの世界は技術的には枯れた業界と言いますか、作っているメーカーの多くも時代の最先端を行くところではない感じですし(失礼)、モデルチェンジの周期も長いです。新製品もどこが進歩したのかよくわからなかったりします。
このところ目を引いたのは、デジタルアンプの進歩でしょうか。圧倒的に小さく作れて、低コスト。「中華アンプ」なんてキーワードで検索すると、ポータブルで音が良いと評価されているものがたくさん出てきます。まだ従来のアナログアンプに及ばない点もあるようですが、時間の問題な気がします。個人的には、そうあってほしいとも思っているのですが。
そこから派生しているのかどうかはわかりませんが、アナログアンプも上記の劣化ポイントを克服しているものがあるんですね。
ボリュームをIC素子でデジタル制御したり、アナログ方式で従来の劣化の可能性を排除したものを開発したり。アキュフェーズを検討したのは、このメーカーのAAVAというオリジナルのボリューム回路から。
あと、個人的に気になっていたリレーについても、アキュフェーズはMOS FET素子で無接点化を実現していました。リレーの排除はすごく大事なポイントと感じていたところですが、その他のメーカーでどうしているのか、この部分は調べてもわかりづらかったです。明確にリレーを使っていないとされているものが買い替え候補でした。
アナログアンプかデジタルかについては、いろいろ調べるとデジタルアンプでも基本性能を追い込んでいるものがありましたが、業界のこれまでの技術やノウハウの蓄積を信じて、アナログアンプ選びました。また、製品寿命の点でも、デジタルより中身がシンプルな分、メンテナンスが長くできる可能性も感じました。今回は、ここが最重要と感じたところなのですが。
● ところで、アンプを入れ替えて音は変わったのか
ここはあえて、おまけ的な部分として書こうと思います。
結論から言うと、変わったように感じています。
どうして変わったのか?
いろいろな要素があるのだと感じているので、そこは冷静でいようと思っています。
たとえば、今回、アンプを繋ぎなおすにあたって、スピーカーコードの両端の被線を剥き直したり(心材の無酸素銅が10円玉のような色になっていました)、やっぱり新しいアンプを確かめたくて、いつもより大きめの音で聴いていたりしているわけです。聴きながらも、自然とアンプに目が行きますから、明らかにオーディオ機器に心を惹かれながら音楽を聴いている状況です。いつもとは、音楽に向き合う姿勢から違っていますよね。
良いアンプだから音が良くなった、という単純な話ではないと理解していますよ。そう思ってしまうと、もっといいものをとハマっていったりもするんでしょうね。
当面、アンプが安定して駆動する環境で一番変化していきそうなのは、私の気持ちかもしれません。
ここまで読んで、素直にアンプを誉めろって思う人もいるんでしょうけど(笑